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昭和美貌録(3)





























    


  宍戸錠さん、本当に逝ってしまったのね
  いつも心のどこかで、期待していたのに

  きっといつかは
  トニーの白いヘルメットが朱に染まり
  邦画界の落日を告げた、あの60年前の
  ゴーカート事故のこと、ヒントだけで
  も残してくれると信じてたわ

 「トニーはホントにいい奴だった
  顔も性格も、全部好きだった
  さっき、死に顔を見てきましたが
  今までで一番キレイな顔してた
  ルドルフ・ヴァレンチノのようだった
  好きだったカウボーイハットと
  拳銃をいれてやりました」



  日活の無国籍アクションの、アウトロー
  として、日本映画の大黄金時代を支えた
  個性的な悪役ながら相手をも引き立たせ
  るショーマンぶりを発揮したジョーさん
  らしい、いかにも控えめで、心やさしい
  和珠の光沢………真珠のネックレスのよう
  なコメントだけど……

  ジョーさんが、純真無垢なトニーの直球
  勝負演技を、いかにソフトにクールに支
  えていたことか、トニー亡き後、その穴
  を埋めるべく、主演したご自身の映画が
  いまいちパッとせず、ジョーさんいわく

  「赤木圭一郎には宍戸錠がいた
   それなのに宍戸錠には
   宍戸錠がいなかった」
   座布団50枚!!!

        

   ここ最近の、私の映画鑑賞(DVD)
    マナーって、見終わったあと、
  「スタンディングオベーション」するか
   一応スタッフに敬意を表して
  「つまらないものを観せて頂きまして」
   (笑)と一礼するかなんだけど
   まぁ自分でも信じられない
   これは事件だったわ

   田村泰次郎「群狼の街」を松浦健郎の
   見事な脚本と牛原陽一監督のメガホン
   で映画化した「紅の拳銃」1961 日活
   
   本格的ガン・アクション作品にして
   無国籍アクションの様式美を備えた
   頂点の傑作とか言われてもねぇ……
   まるで肌の合わない邦画現代劇(汗)

   しかし!始まるや、画面を支配する
   大華の閃光に眼が釘付け!
   こ、こ、これは太陽の40万倍輝く
   といわれる「エータ・カリーナ」星?
   いや、この場合太陽の160万倍の
   明るさがあるという「ピストル星」か

   トニーの、全身をフルに使った動き
   ロング、バストからクローズアップ
   まで隙なく演じてみせるその躍動感
   華と影の交錯もみごとで
   平凡な市井の一市民の非凡さの表現
   という離れ技をやってのけてる
   眼光の鋭さも傑出しており
   特に驚異的なのは「受けの芝居」!

   ラブシーンで、恋人役の笹森令子
   さんにほめそやされ、それを求愛
   と見抜くや、とっさにスプーンで
   赤面を隠しながら、ほんの一瞬で
   若者の、内心の恍惚と不安を表現
   してみせる、その能力!!

   これこそ太陽の一億倍の光輝を放つ
   「全身ピストル星」であったか!
   ううっ、そんなのないか、とにかく
   21才の主演作!しかも遺作とは!
   感動のぶっちぎりスタンディング
   オベーションでした
   
   
   
     
   しかし「待っていたのは哀しい
   うわさ…」(霧笛が俺を呼んでいる
   の主題歌より)

   大都会のレンタル最大手店には
   「紅の拳銃」はありましぇん   
   それどころかトニーとジョーの
   人気を決定づけた「拳銃無頼帖 
   抜き射ちの竜」について聞くと

   青年の声で「はい、ムチウチの
   リュウですね」身体を二つ折り
   にして、何とか笑い声を押さえ
   たものの「けんじゅうぶらいち
   ょう」という、語意を理解して
   頂くのはほぼ絶望で、こわごわ
   おトシを聞いたら、30代とか

   昭和は遠くなりにけり……
   まぁ、ふるさとは遠きにありて
   想うもの、とかいいますからね
   えっ意味が違う?失礼しまスタ
   


       
   思えば、私が、初めてトニー
   の名前を知ったのは
   当時ハマっていた、国内旅行で
   行き先探しの時、赤木圭一郎と
   いう俳優が「福島の裏磐梯なんて
   こんなキレイな所があるのに
   なんで外国までロケに行かなきゃ 
   ならないんだ」とかのたもうたと
   聞いて半信半疑で、ヨロヨロと
   出かけて行った福島県!

   あろうことか裏磐梯のレンゲ沼
   をはじめとする光景は、風韻を
   漂わせた、至純の別世界であり
   ました。
   何もかもが、生まれたてのような
   手つかずの清廉さにみち、かぐわ
   しい地上の仙境に、風と光につつ
   まれて俗世間を離れた、至福の刻
   を過ごさせて頂いたのでした

   愛する「飛鳥天平時代」の人々が
   竜笛(りゅうてき)や胡弓(こきゅう)
   を弾奏しながら、行き交う姿や
   青い松の木に羽衣をかける天女の
   姿さえおぼろげに見えたような…

   中大兄皇子も通りすぎ、額田王と
   おぼしき女人の横顔も……それは
   幻想でありながら、私が私でいら
   れるために必要な……精神の内部
   への、リアルな感触を伝えるかけ
   がえのないひとときでした
   
   

   そして、頂戴した福島県の温泉で
   作られたウイスキーの素晴らしさ
   をどうして忘れることができまし
   ょう。あれは神の賜物、まろやか
   で芳しく悪酔いもせず、ぐっすり
   と眠れるのです

        

   福島の美しさは日本人の心の故郷
   だと看破したトニーは、頭脳明晰
   な青年だったのでしょうねぇ
   「………人を愛する。ほんとうに
   ホレるなんてことあるんでしょうか
   一人になるのが寂しいから二人で
   いる。それだけのことじゃないん
   でしょうか?」

   街を歩けば、たちまち黒山の
   人だかりに囲まれそうな青年に
   こうも言われりゃ誰も太刀打ち
   できませんワイ
   カッコいいんだなぁ……
   スターはカッコよくなきゃナァ

   アインシュタイン先生によれば
   人の仕事は90%、先人の業績に
   よっているとか。これほどまでに
   大衆の喝采を浴びながらも、気品
   を失わず、稀有な国際競争力を備
   えた、恐らくは日本の生んだ最大
   の映画スターは「楡の木陰の欲望」
   や「熱いトタン屋根の猫」を演じ
   る夢を抱いたまま、遠く輝く先人
   の星となってしまった

   そして今、私のもとにようやく
   輝く星光が届けられたのね
   1959年、山崎徳次郎監督の
   「拳銃0号」でエキストラから
    事実上のデビューを果たした
   トニーの、それはそれは見事な
   「紅の全身拳銃星」として     
       

   
   なーんて、ここまで聞いて
   ジョーさん呆れてるかな?
   でもね、でもね、トニーと
   そして、トニーの事故の僅か
   3ヶ月前。1960年12月
   26才で他界された映画俳優
   森美樹さん、松竹が社運を賭
   けて惚れ込んだ、彼の夭折が
   日本映画界の凋落の引き金に
   なったとしたら…なぁーんて
   ちょっぴり、気になってねぇ

   ジョーさん、「殺しの烙印」と
  「拳銃(コルト)は俺のパスポート」
   大好きなの、外国で人気があるの
   もよく分かる。そしてね、
   あの事故のこと、ジョーさんが
   ひとことも、何も言わずに逝って
   しまったのがそれが答えだった
   って、今はそう思えるの。

   
   だって、貴方はトニーファンの
   中に永遠に生き続けるんですもの
        








            


    

      
    大庄さん、どうもありがとう!
    この私でもお花がいただける
    のだという不動の証拠写真(泣)

        
 



















       



         
        
プロフィール

星月一人

Author:星月一人
戦争の20世紀も過ぎ人類の
自己表現が自由な時代に感謝
でも本音は私を最高の戦友と
呼んで下さる方を探してます
皆様の弥栄を願う日の丸写真

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